CAE実施前の状況
ヘッドライニング(天井材)は多層の積層体をプレス加工にて成形されます。自動車外板のような金属材料とは異なり、粘弾性を持つためシミュレーションでの予測は困難で、実部品での評価に多大な時間やコストが発生してしまい、、開発スピードに課題が残されていました。ヘッドライニングは見映えは勿論の事、断熱や収納等の機能も兼ね備える重要部品であり、昨今の環境課題に対応していくためには、より一層の開発スピードの向上が求められます。
CAEへの期待効果
成形時における基材破断・表皮シワの発生等のトライ&エラー削減を目的として、発生原因を迅速且つ精度よく特定し、開発初期段階での判断と対策に生かすことを期待し、シミュレーションで予測技術を確立しました。
CAEソフトウエア選定
はじめに解法の検討を実施しました。動的陽解法や静的陰解法は解析精度や解の収束性に難があり、静的陽解法を用いた㈱先端力学シミュレーション研究所の「ASU/V-Struct」に注目しました。次世代構造解析ソフトウエア「ASU/V-Struct」は静的陽解法ならではの解の安定性や精度に優れ、他の解法では計算不可能なほど複雑な非線形現象が重なるプロセスを実行できる点と、ソフトウエア開発者によるサポートが決め手となり導入を決定しました。
着目する成形不良
天井成形シミュレーションの実現には、高性能な解析ソフトウエアに加え、同社ならではの製造ノウハウや、様々なシミュレーション技術を盛込む必要があります。着目点は成形不良の多い頂点の伸び過大によるウレタン破断と根本部の表皮シワとしました。
モデル化
多層構造の天井材モデル化については実現性を考慮し、SEM観察等の実部品把握や、シミュレーションのアルゴリズムに関連する要素の洗出し等で実現象を再現できるモデル化と計算パラメータ設定等でシミュレーションによる破断とシワの評価を実現出来ました。
CAE開発概要(考察手法の確立)
要因特定と対策検討のため、断面考察を行いました。鋼板プレスと違い、基材が柔らかく緩い拘束の成形のため、断面上の材料シートの動きと状態の変化の解析を実施し、拘束位置により金型との接触位置が変化し、シートの滑り込みと伸び具合が変化する様子が確認でき、メカニズム解明と対策に関わる影響因子を得る事ができました。
ジグ位置による金型とシート材の接触状況の違いをシミュレーションで再現。