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ASU/V-Struct事例

ホース品質を左右する「カシメ加工」にCAEを活用

日本ハイドロシステム工業株式会社(JHI)様

企業概要

JHI様では航空機のテクノロジーとクオリティを自動車に実現することをモットーに、モータースポーツ最高峰に適用可能な、ホースおよび配管システムを開発してきました。蓄積された技術やノウハウを幅広い次世代産業に応用可能です。ASTOMのシミュレーション技術を活用頂いた背景と効果について同社の製造部長A様にお話しを伺いました。

背景(JHI様)

JHIではホース・配管システムの技術を元に、様々な分野でお客様のニーズに応えるホース製品や配管システムを提供しています。ホースの構造は簡単に言うと、内側の金具(金属)と外側のパイプホールド(金属)でホース(樹脂やゴム)を挟み込んでカシメる事で、圧力を保持しながら金具とホースを一体化します。ホースアセンブリは柔らかいホースに金具を如何に上手く接続するかがカギであり、ホースのトラブルの多くはこのカシメ部で発生します。強くカシメすぎるとホース自身を痛めてクラックを生じさせてしまい漏れの起点となってしまい、緩すぎると十分な面圧を確保できずに、これまた漏れの原因となります。ホースに流す液体や気体は温度や圧力は様々で、ホースの性能を使い切るためには、それに見合ったカシメ性能が重要となり、ホース製造メーカの腕の見せ所であります。今回はASTOM様の協力により、より良いホースを開発するために重要な技術であるカシメ工程についてCAEによる可視化・数値化を実施しました。

日本ハイドロシステム工業株式会社

CAE実施前の状況

カシメ部の詳細形状はこれまでの知見に基づいて開発を続け、試行錯誤により現状の性能を満たす形状に辿り着きました。耐圧性能や寿命性能を確保できていることは当然確認していますが、応力分布や圧力分布をミクロに把握する事は実験的に難しいため、よりよい設計を詰めていくためには、対症療法的に試行錯誤するしかない状況でした。

CAEへの期待効果

シミュレーションモデルを作成する過程で、各構成要素の物理的挙動を通じてカシメ工程を理解し、ホース設計に生かすことを期待しました。特に実験では測定が難しい、各部に生じる応力や圧力の分布を定量的に把握したいと考えていました。

CAE実施後

解析の実施により、ホースをカシメる工程でのミクロな挙動への理解が深まりました。設計の定量的な評価には実験と解析がまだまだ必要ですが、定性的には詳細設計形状と性能への寄与度を理解できたので、現行形状の良い点と改善できる点を理解できました。今後のホース開発への大きな指針を得る事が出来たので、よりよいホースを開発するための助けになったと感じています。

CAE概要説明(株式会社先端力学シミュレーション研究所)

図1に解析対象を示します。カシメ前は金具とパイプホールドの間に挟まれた状態のものを、金型の上面から力を掛け、内部が窄まった金型に押し込んでいくことでパイプホールドが絞られてカシメが成立します。ここでポイントとなるのはパイプホールド塑性変形する事、パイプホールドと金型が摩擦を生じながらスライドする事、パイプホールドと金具部のメタルタッチで変形する事、弾性率の著しく低いホースもカシメられることで伸びる事、等々により挙動が複雑になります。 本事例では金型の押込み深さを変えた場合、
①カシメに必要な垂直力
②金具とパイプホールドのメタルタッチ部に働く力
③パイプホールドの形状とホースの伸び量がどう変化するか
を解析しました。

解析モデル

解析モデルは形状対称性を利用して1/4モデルとしています。また、金型の押込み量が0.1mmずつ異なる3ケースの解析を実施しました。尚、実際には金型に金具を押し込みますが、解析モデルでは金型の接触面を移動させています。

金型押し込み量

Case1: 14.77mm
Case2: 14.87mm
Case3: 14.97mm

CAE結果

図3 金型押込み量によるミーゼス応力の変化(Case1)


図3にカシメ開始(押込み量0.00mm)から、金型を開放する直前(押込み量14.77mm)までのミーゼス応力の変化を示します。このように金型の押込み量が増えるに従って応力がどのように変化するかを確認することができました。また、変位(ひずみ)、および力の変化も同様に確認することができました。

表1 金具上面に働く力(金型開放直前)


表1に金型を開放する直前における金具の上面に働く力を示します。押し込み深さによってカシメに必要な押し込み力が変化する様子が分かります。

表2 接触面に働く力(金型開放後)


表2に金型開放後における金具とパイプホールドの接触面に働く力の大きさを示します。金具とパイプホールドの接触面に働く力は、Case1では接触面2の接触力がほぼゼロであるため密着性が確保されていないのに対し、Case3では大きな荷重となり密着性が確保されていることがわかりました。

図4 製品寸法


図4に加工後(金型開放後)の製品寸法を示します。加工後のパイプホールド寸法とホースの伸びは、金型押込み量の違いによりあまり変化がない結果となりました。このようにカシメ加工解析により、製造時に発生する力、各部品間に生じる残留力や寸法変化を評価し、加工条件や金具等の形状の良否を判定することができました。

使用した解析ソフトウェアASU/V-Structの紹介
(株式会社先端力学シミュレーション研究所)

本事例のような接触を伴う大変形の問題は、汎用ソルバーでは解析が困難である場合が多く見受けられます。今回紹介したASU/V-Structは、非線形性(材料、幾何、接触)を有する構造解析と伝熱解析の連成解析を安定して計算することが可能です。ASU/V-Structは理化学研究所により開発された静的陽解法ソルバーをベースに実用化されました。温度変化を伴う成形加工、例えば真空成形、熱間プレス、鋳造凝固過程、樹脂射出成形冷却過程、およびプレス金型撓みなどをシミュレーションすることができます。また、専用GUIで、解析に不慣れな方でも簡単操作で利用でき、メッシャーも標準で搭載されているのでCADデータから解析をスタートできるオールインワンのソフトウェアです。

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